中国・南モンゴルの住民がこの3週間、農地や牧地に廃棄物をたれ流している化学プラントに対し抗議行動を起こしている。住民によると、先週末には警察が取り締まり、100人以上が負傷、数十人が逮捕された。同地域のインターネットは切断されているが、住民らは取り締まり時の動画や画像を配信している。
米国に拠点を置く「南モンゴル人権情報センター」は住民と連絡を取り、取り締まりの状況について配信している。
周辺の村々から集まった住民約1000人が、南モンゴル東部ダーチンタラ(大沁他拉)鎮付近にあるナイマン化学工業団地(奈曼化工園区)の閉鎖を要求してデモを行った。当局は3月29日、企業活動を一時停止し、環境調査を実施するという通知を出した。ところが、住民はこの約束を信じていない。住民は4月5日、精製工場に通じる工業団地入口を閉鎖した。機動隊がすぐに投入された。
「私たちは工業団地を閉鎖するという当局の約束は信じていない」
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イ・ナイマン:
ドローダイ(道労代)村に住む農民・牧民 |
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「警察の取り締まりが始まると、逃げるほかはありませんでした。住民側は数では勝っていたので、警官はゴム弾や催涙ガスを使用しました。また、放水銃や警察犬も使っていました。警察犬は噛みませんでしたが、住民に飛びかかり引き倒していました。ゴム弾で多数の負傷者が出ました。1人が亡くなったと聞きましたが、はっきりしたことはわかりません」
「工業団地ができて10年ほど経っていて、汚染が年々ひどくなっています。工場からは有害な廃棄物が私たちの土地にそのままたれ流しにされています。作物は病気になり、トウモロコシの収穫量は以前に比べて20~30%落ちています。果物の木は全部枯れてしまいました。周辺には悪臭が漂い、癌と血栓症の患者が非常に増えています。地下水が汚染されたため、家には浄水器が要ります。ただ、これも少しは役に立っても、健康に悪い影響がないかと心配です。
この数年、私たちはあらゆることをやってきました。あちこちの役所に嘆願書を出しましたが、役所から満足のいく回答はありません。役所は、工場の操業を一、二週間停止するなど一時的な対策を取るだけです。そのため「今週末に工業団地を閉鎖する」という当局の発表は信じられないのです。当局がこの地域のインターネットを切断し、電話回線もつながりにくくなっているのは決して良いことではありません。必要ならまた抗議行動を起こします」
「中国政府は、そこは無人の土地だと考えていますが、決してそうではありません。何百年何千年とモンゴル人が住んできた土地なのです」
「私たちはとても気がかりな情報を入手しました。当局が各戸を訪問し、家の中を調べ、人々を尋問して回っていると地元住民が話していました。地元政府が、抗議行動に参加した住民を起訴すると告知した公文書も送られてきています。政府はまた、地元住民に今後いかなるデモにも参加しないという文書に署名を強制しているそうです。これらのことを考えると、工業団地が閉鎖されるということを地元住民が信じられないのは明確でしょう。
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トーチョグ・エンフバト:
南モンゴル人権情報センター代表。周辺住民にインタビューを行った |
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当局は、住民を一時的になだめるため(必要であれば取り締まり)以前にも同じように対応したため抗議行動が拡大しなかったのです。これによって、当局は最も厄介な活動家らを検挙するための時間かせぎができました。同様の手段が2011年、鉱山会社への大規模な抗議行動の最中にも自治区中部で使われたのです。当時、地元政府は鉱山を閉鎖すると約束しましたが、その鉱山は今も変わらず操業を続けているのです。
モンゴル人は、化学や鉱山関係の企業だけでなく巨大な軍事訓練基地によっても土地をどんどん失っています。中国政府は無人の土地だと考えて収奪し開発することが容易いと考えています。しかしながら、そこは無人ではなく、モンゴル人が何百年何千年と生きてきた土地です。その土地は家畜や作物に必要で、モンゴル人が生きるために必要な土地なのです」
南(内)モンゴルは中国の自治区の一つであり、国土面積の12%余りを占める。地下資源が豊かで、特に石炭、天然ガス、レアアースが豊富。開発ブームが南モンゴルへの漢人の流入をもたらした。現在モンゴル人は自治区全人口の20%にも満たない。若い世代は汚染された牧草地での伝統的な遊牧生活を捨てて、都会で働くことを模索する傾向にある。
(原文)
http://observers.france24.com/content/20150410-inner-mongolia-villagers-land-chemical-pollution