下記の手紙は、南モンゴルのモンゴル人牧民オドンゲレルさんが南モンゴル人権情報センター(SMHRIC)へ宛てた公開書簡の日本語訳である。昨年11月、国連フォーラム・マイノリティ問題会議がジュネーブで開催され、SMHRIC代表と中国政府代表との論争が起こった。それに関するオドンゲレルさんのメッセージが先ずWeChat(微信)など中国SNS経由でアップされ、後にfacebookやTwitter経由で配信された。オドンゲレルさんはモンゴル牧民の権利を守る活動を継続しており、中国当局に何度も逮捕、拘留、投獄されている。
南モンゴル人権情報センターへの感謝状
先ず何よりも、皆さんのご健康とご清栄をお祈りしたいと思います。
皆さん、いつも大変お疲れさまです。南モンゴルのモンゴル人のために誠心誠意尽力している皆さんに心からの敬意を表したいと思います。皆さんは国際社会においてモンゴル人のために闘い、事実を伝えてくれていることを誇りに思います。
その一方で、ニュース動画で見た中国代表の厚顔無恥ぶりは明らかでした。「中国56民族の団結」などとの発言にはうんざりします。漢人は、団結を全面に出しながら騙しや暴力によってマイノリティの土地に執拗に定住しようとします。ところが、マイノリティと団結するわけではなく、マイノリティが「団結」することを暴力によって成し遂げようとするのです。漢人が本当に祖国の統一を考えているのなら、どうして自然を破壊し、鉱山開発を進めて水や大気を汚染して、生きとし生けるものに脅威をもたらしているのでしょうか。
マイノリティの土地に大きな予算を投入しているそうです。実際、それらは漢人植民者たちを定住させる政策、予算であると言うのが妥当です。
例えば、各ホショー(旗)に民族の特徴を備えた建物を建てます。ただし、この建物に住んでいるのはその土地の先住民ではなく、移住してきた漢人たちでいっぱいです。そして、予算が下りてくるとその大部分が植民者たちにもたらされ、その土地の人びとに届くものは何一つないのです。鉱山を開発する、有害な産業を起こす、養豚場を誘致するなど全てがその地域の牧民・農民の権利を侵害し、環境を破壊し、最後には内モンゴルを人びとが存在できない土地にしてしまうような政策を取り、それに反対する人びとは、逮捕・拘留する、想像を絶する暴力で弾圧しています。
南モンゴルで先住民の人権や自然環境がこのように蹂躙されて破壊されている現状を皆さんはしっかり理解し、大国の巨大な力に怯むことなく、民族のため正義のために尽力し、世界中の人びとの事実をそのまま伝えてくれていることに心から敬意を表したいと思います。
牧民オドンゲレル
2017年1月3日