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「尖閣と書いてあるから、この地図は日本人が高く買う」とにんまり 中国庶民は尖閣よりお金?

2013-02-28
Sankei News
 
   
 
中国で出版の「世界地図集」には、「琉球群島」の範囲内に「魚釣島」と「尖閣群島」と記されていた(楊海英氏撮影)

 

 
 
1958年に出版された中国の「世界地図集」

 

 
 
楊海英氏

 

 

静岡大学教授 楊海英氏

  中国人たちが春節を祝っている間に内モンゴル自治区や北京市郊外を歩いてみた。民間の人々が日中関係をどのように理解しているのかについても、少し調べてみた。北京や広州、それに西安などの都市部では昨夏に過激な反日デモが繰り広げられたことは既に日本でも詳しく報道されてきたが、農山村に住む人たちが日本をどのように見ているのか。庶民の文化のなかの日本観や領土観が知りたかったからである。

冷めたモンゴル人

 内モンゴル自治区西部の草原の奥地にある人口約2万人の小さな町でも反日の嵐が沸き起こった、と知人は語る。日本車は壊されたり、ガソリンスタンドでは給油を拒否されたりしたという。新しく買った日本車も運輸機関に登録を断られたとも聞いた。

 しかし、このような反日運動を主導したのはいずれも中国人すなわち漢民族で、モンゴル人たちは冷めた目で眺めていたという。モンゴル人たちは、今の中国による抑圧と略奪的な資源開発に強い不満を抱いているので、日本に敵意を抱く人はほとんどいない。

 日本車を持っている人たちにも「愛車の保護策」があった。「釣魚島(尖閣諸島の中国名)を守ろう」とのステッカーを貼って走ることだ。「車は日本車でも、愛国主義者だ」との姿勢を示して自分の財産を守っている。

 旧暦の大みそかの夜は爆竹の爆音が夜通し鳴り響いた。もっとも大きな音が出る銘柄は「東京大爆炸(大爆撃)」だという。カメラに収めようと探しもとめたが、なかなか見つからない。「人気が高くて、すぐに売り切れた」と、爆竹屋は自慢げに語る。

北京で見つけた地図

 帰りに北京市内の古本屋街に立ち寄った。なじみの店で1958年に出版された「世界地図集」という地図帳を見つけた。めくってみたら、なんと「琉球群島」の範囲内に「魚釣島」と「尖閣群島」と記されているではないか。中国が今主張している「釣魚島」との表現はどこにも見当たらないし、禁句になっている尖閣群島が鮮明に印刷してある。

 「あなたには譲らない。日本人に売るよ。『釣魚島』ではなく、『魚釣島』と『尖閣群島』と書いてあるから、日本人が高く買ってくれるはずだよ。それに政府は今、この地図を回収して回っているのだ」と、店の主人がうれしそうに話す。

 交渉に交渉を重ねてやっと地図帳を手に入れた。中国でもっとも権威ある国営の「地図出版社」が公刊した、豪華な本である。一党独裁のもとで、共産党中央宣伝部の厳しい検閲を経たものでなければ公開できない時代の産物である。「社会主義の先輩、ソ連の先進的な製図の技術を学び、中等以上の学識ある人たちが世界情勢を正しく認識するために編纂(へんさん)した」と、出版社の編集部はその前書きで地図出版の目的について明記している。

 中国人たちは昨年夏に「内モンゴルの草原を失っても釣魚島を守る!」という横断幕を掲げて行進していた。その一方で、「古くからのわが国の固有の領土」との主張の根拠を覆す資料を高く日本人に売りつけようとする庶民がいるのも現実である。中国特有の官製ナショナリズムと庶民文化との乖離(かいり)の実態を表す象徴的な事実である。

 この地図については、日本側も把握しており、外務省のサイトhttp://www.mofa.go.jp/mofaj/area/senkaku/qa_1010.htmlにも掲載されている。

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