内モンゴルでは、厳重な取り締まりや不安定な中国西部における弾圧を経験することはめったにないが、人権団体には「南モンゴル」としても知られる同地域が、中国共産党の下で非常に苦しい状況にあることを信じる人びとがいることも事実である。内モンゴルの大部分は、中国では最も穏やかな地域であるが、時に不穏な状況・暴力・民族間の緊張が発生している。
今月はじめ、土地収奪への抗議行動を実行させないようモンゴル人17人を北京から強制退去にした。このような紛争は中国や世界では毎日のように起こっており、内モンゴルにおいて伝統が取って代わられる発展のプロセスにすぎないのである。
それ以上に、環境保護主義と植民地主義に対する怒りが継続して存在していることが問題である。米国を拠点とする人権団体「南モンゴル人権情報センター」代表のトーチョグ・エンフバト氏が同地域が直面する問題について『ザ・ディプロマット』のインタビューに答えてくれた。
記者:今日、南(内)モンゴルはどのような人権問題に直面しているのですか。
トーチョグ・エンフバト:南モンゴルではあらゆる種類の人権侵害が起こっています。多くの問題の中で、恣意的な逮捕や非合法な拘束、モンゴル人牧民の土地に対する権利や伝統的なライフスタイルを維持する権利の侵害、言論・集会の自由への弾圧などが特に深刻です。
記者:南(内)モンゴルへの漢人の移民問題がこの地域において暴力や諸問題の原因になっていると考えていますか。
トーチョグ・エンフバト:その通りだと思います。漢人移民は古くよりずっと実施されており、今後も南モンゴルにおけるあらゆる種類の暴力と人権侵害の根本的な原因になっていくと考えられます。南モンゴルにおける中国の植民地体制は漢人移民にその基礎を置いており、また支えとなっています。
1960~70年代の南モンゴル人に対するジェノサイドと大量殺戮は中国政府と南モンゴルへの漢人移民によって実行されました。原住民であるモンゴル人と漢人移民間の土地紛争は、中国当局の後ろ盾で漢人農民と鉱山関係者の非合法の土地収奪によって一方的に引き起こされています。南モンゴルの環境破壊は、ただ漢人移民の持続不可能な農法と無法な鉱山開発によって発生しています。
記者:共産党は状況を変えるために協力的ですか。南(内)モンゴルの人びとの不安を解消する対応ができると考えていますか。
トーチョグ・エンフバト:南モンゴル人は、南モンゴルにおける中国の植民地政策を計画・実行・擁護する責任をもつ唯一の実行者、共産党への信頼を完全に失っています。中国や南モンゴルにおけるあらゆる問題の主な原因として、中国共産党が建設的な変化をもたらすことはなく、ただ状況を悪化させるだけです。
記者:オラド中旗の牧民たちが最近、北京において請願書を提出し、それが原因で強制退去させられました。牧民たちの苦悩は地方住民に共通していますか。
トーチョグ・エンフバト:オラド中旗の牧民の事件は特別な例ではなく、氷山の一角にすぎません。何百という同様の事件が南モンゴルのあちこちでほとんど毎日のように起きています。
記者:貴団体は南モンゴルにおいて何を実行しようとしているのでしょうか。
トーチョグ・エンフバト:私たちは南モンゴルのモンゴル人の人権意識を促進し、人権を擁護することに専念しています。私たちの主な活動は、南モンゴルの問題を国際社会に広めることと同時に、自由な世界では何が起きているのか、世界中の人びとが自由のためにいかに闘っているのかについて、南モンゴル人に知らせることです。私たちの究極の目標は、南モンゴル人の能力を高めて、モンゴル人が自らの未来を自決できる環境を整えることです。