No.24　2003/01/07 （準備版・週刊）

内モンゴル牧畜民が襲撃され、放牧地から追われる

[南モンゴル人権情報センター（SMHRIC）、ニューヨーク、2002年12月30日付]

　内モンゴル・アラシャー・アイマク（阿拉善盟）のモンゴル牧畜民らが、隣接する甘粛省張掖地区の漢人農民に襲撃され、使用権のある先祖伝来の放牧地から追い出される事件が起こった。アラシャー・バローン・ホショー（阿拉善右旗）アルタンツォク・ソム（阿拉騰朝格蘇木）の牧畜民らが世界中のモンゴル・コミュニティに宛て送った公開書簡の中で、事件について記し支援を訴えている。公開書簡その他情報筋によると、2002年7月1日から22日にかけて、アルタンツォク・ソムのアラク山およびアルタン・テブシ山付近に宿営するモンゴル牧畜民らが、甘粛省張掖地区の漢人農民グループから何度も襲撃を受けたとのことである。農民らの目的は、牧畜民の放牧地を耕作するため占有することである。少なくとも40人の牧畜民が暴行を受け、その多くは手足を骨折したという。牧畜民は、強奪と治療などのために何万元という被害を受けている。当センターが集めた情報によると、牧畜民が地元政府に事件の解決と助けを求めたが、アラシャー・アイマクおよび張掖政府当局は事件を黙殺しているという。牧畜民が受けた損害はいまだ補償されておらず、事件の犯人らに対して何の処分も下されていない。

　当センターはこの事件に深い関心を寄せ、内モンゴル自治区および甘粛省政府当局に対し、犯人らを即刻処罰し、被害者に対する賠償を求める。そして、これが単独の事件でないことをここで指摘しておく必要があろう。実は、過去においても隣接する省から漢人農民や移民たちが放牧地を占有するため牧畜民を苦しめたり襲撃したりしてきたのである。当センターは、中国政府がこのような事件やモンゴル人らの抵抗運動を無視し、仮に取りあげても漢人側に有利なように紛争解決し続けてきたことに失望させられてきた。このような状況が繰り返されることにより、結果としてモンゴル人が放牧地を放棄することになるばかりでなく、伝統的なライフスタイルをも捨てざるをえなくなっている。付言すると、漢人農民が放牧地を耕作することは、内モンゴルのエコ・システムを劣悪化させる要因のひとつとなっている。したがって、当センターは、内モンゴルにおいてモンゴル人が受けている不当な扱いとエコロジー問題に対して国際社会が関心を寄せるよう求めるものである。モンゴルの民族同化の問題は、中国の少数民族地域全体の中でも最悪の状態である。

　　　　　　　　　　　（2003年1月1日付メールより、原文は英語）