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モンゴル・レター

No.40 2004/12/4(不定期発行)

モンゴルのロックバンドを中国が閉め出した

 

(モンゴル国ウランバートル)中国の皇帝がモンゴルの侵入者を閉め出すために長城を築いたように、一党独裁の共産党は、チンギス・ハーンの民族意識を鼓舞するモンゴルの「文化的侵入」であるロック・ミュージックを撃退しようとしている。

10月下旬、中国政府は内モンゴル自治区における一連のロック・コンサートの企画者らに対しコンサートの中止を指示した。理由は明らかにされていないが、最初のコンサートが予定されていた内モンゴルの首府フフホトの大学構内には数百人の警官があらわれた。モンゴル国でもっとも人気のあるロック・グループ「ホルド」(「スピード」の意味)のメンバーらは、最初の公演に出かけようと1030日モンゴル国首都ウランバートルを出発しようとしていた。コンサートの中止は、まさにその当日に知らされたのである。コンサートが予定通り開催されればモンゴル人の若者らの民族感情に火をつけるかも知れないと、中国当局は懸念したのだと、内モンゴルのバンド仲間が語ったという。

 

高まる緊張

 

 メディアによると、内モンゴル西部オルドス地方にあるチンギス・ハーン廟が政府によって民営化されるという計画に反対しているダルハド・モンゴル族と「ホルド」とを結びつけて報じている。同廟の新しい開発計画により、ダルハド族が何世紀も管理してきた観光分野で漢人ビジネスマンが利益を得ようとしているという。ホルドのメンバーたちは「自分たちはダルハド族ではない」と言っているが、この数週間、廟の民営化をめぐりモンゴル人と漢人の間の緊張が高まっており、ホルドの民族色の強い歌詞に鼓舞されて状況がさらに激化するのではないかと、中国政府は懸念したのである。ダルハド族は、数百年前、チンギス・ハーンが内モンゴルに残した木製の弓などの遺物の保管を命じられた部族である。

 観光分野における経済的な損失が懸念されたが、ダルハド族は自分たちにおこっていることをニューヨークに本部をおく「南モンゴル人権情報センター」を通じて世界に発信した。それと同時に、内モンゴルのモンゴル人学生らがダルハド族に同情をしめし始めたのである。ホルドのメンバーは、これらの動きに関して多くを語らなかったが、自分たちがダルハド族であることを否定した上で、内モンゴルでふたたび公演が許可されることを希望していると語った。なぜなら、内モンゴルではカセットテープやCDがモンゴル国よりよく売れるからである。ホルドは2000年以降内モンゴルを3度訪れているが、年々、中国人たちは、ホルドの音楽に対してより寛容になってきているようである。

 

民族色の強い歌詞

 

 内モンゴルの若者たちは、バンド・メンバーに「みなさんの音楽は、ぼくらがモンゴル語で話し続けるために必要なんです」と語ったという。また「ときには観客が立ち上がり『ぼくはモンゴル人だ!』とか、もっとシンプルに『チンギス!』と叫んだりするんだ」と付け加えた。中国政府当局は、バンド・メンバーに「ぼくらモンゴル人はみんな仲間だ」とか「モンゴル人よ、みんな立ち上がって叫ぼう」などと言わないよう、また、観客を熱狂させないよう忠告したという。ホルドの音楽性は、世界中のロックに比べれば、歌詞もおだやかな内容で「怒り」よりもむしろそのソフトさがモンゴル以外の観客を魅了している。ただ、それは紛れもなく民族色が強いのである。そして、それが中国当局が懸念するところなのである。もっとも人気のある曲のひとつ『モンゴルで生まれた』では、「偉大なる伝説の英雄の地」「限りなく広がる大地」「天の刻印のある聖地」などと歌っている。ホルドの音楽は世界中のロックに影響をあたえるほど衝撃的なものではないが、中国の政府関係者や警官に緊張感をあたえ、いまにも火がつきそうな民族意識をおさえる行動をおこさせるには十分であったようだ。

(ダン・サザーランド/ラジオ・フリーアジア編集局長、20041118日付)

 

 [編集・発行] SMHRICOSAKA

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